たにやんの住まい勉強会

住まいについて学んだことを記事にしていきます。

住まいの空気環境

①空気の温度と湿度の相関関係
空気は気温が高ければ多くの湿気を含むことができます。
また、温度が下がれば、湿気としてとどめておくことができず水になり、部屋の表面などに結露として現れます。つまり、室内で温度差が大きいと結露に結びつきます。特に空気がこもるような場所は要注意です。従って、北側の部屋、地下室、床下収納、ロフトやトップライト周辺は特に注意が必要です。その為には、空気を動かすことが大切で、その手法の一つが換気です。
特にトップライトが湿気の発生しやすい、水廻りで使用する場合は、開閉のタイプのトップライト、さらに、アルミ製ではなく、熱伝導率の小さい木製(日本ベルックス)のフレームをお奨めします。

②調湿は人だけではなく、木造構造に優しい
内装材に使用される木製品や断熱材は調湿ができる材料を選ぶことで、安定した湿度の空気環境(相対湿度50%)を実現します。これは、人間が最も健康で過ごせる湿度環境で、人は快適な空気環境の空間と感じることができます。同時にそれは、木造の構造躯体にとっても健全な環境を作り出します。
乾燥収縮による、割れ、縮み、そり等の経年変化も、またその逆の湿潤さによる腐朽や白蟻の食害なども発生しづらい環境を実現します。
しかも50%前後の湿度環境は室温のわりには「夏涼しく、冬温かく」を体感することができる、エコで快適な室内環境をもつくりだします。
人は、湿度が10%上下すると、体感温度も1℃上下したと感じます。

③快適な冷暖房
室内への自然環境の取り込み方次第でも省エネルギーを実現することができますし、実生活の気持ち良さも変わってきます。
夏は、太陽光による熱から家を守る為、庇を利用し室内への直射日光の侵入を防止する。また夏は南東からの風を積極的に家の中に取り込む。更に高所からの冷房(小屋裏からの冷房)による空気の循環を促す。
冬は、太陽光によって室内を直接温めること、またその熱を断熱材や空気に蓄えることで暖房に頼り切らない設計。加えて床暖房によって、湿度変化のないアクティブ空調。

漆喰の効能

①同じ自然素材の塗り壁、珪藻土とどこが違うのか
どちらも地球からの贈り物ですが、大きな違いはその原料にあります。そのことにより、空気中の二酸化炭素と反応し自力で硬化できる漆喰と添加物の力を借りなければ硬化できないのが珪藻土です。その添加物が自然素材か、化学物質なのかによって安全性が異なります。

②炭酸カルシウム(石灰石)の特徴
炭酸カルシウム(石灰石)が酸化カルシウムに、そして水酸化カルシウム(消石灰)を経て石灰石に戻るまでの反応式は・・・
CaCO3 → CaO → Ca(OH)2 → CaCO3
石灰石 生石灰 消石灰  石灰石
    ↑     ↑       ↑            ↓
        CO2         H2O          CO2       H2O
塗った状況の水酸化カルシウムは、二酸化炭素と反応して硬化して石灰石になります。それは硬く、強アルカリ性(PH-13以上)であり、無機材で静電気も発生しずらく、汚れを付着さずらい、カビやコケなどの有機物が発生することも少なくしてくれます。更に、外壁が泥水などで汚れても、強アルカリ性による酸化還元作用で漂白し目立たなくしてくれます。その他にも吸放湿性、火に対しても燃えずらく、有害ガスの発生もありません、多孔質の材料となるので断熱性が高いことや、吸音性が有り反射音や反響音も和らげます。

③ホルムアルデヒドも分解する漆喰の力
空気中のホルムアルデヒドと水酸化カルシウムは反応し、蟻酸カルシウムCa(HCOO)2になり壁に固定化します。固定化された蟻酸カルシウムからはホルムアルデヒドが再放出することはありません。

④壁の仕上げ材としての特徴
漆喰は、②でも少しふれたとおり無機物なので、静電気による汚れも、苔、藻、カビなどが付着しづらい性質があり、仮に汚れてしまったとしても強アルカリ性の酸化還元作用により、多少の時間がかかるものの目立ちにくくしてくれます。塗り壁独特の表情も楽しむことができます。塗り壁としての特性ですが、曲面や自由な造形を仕上げ材として形にすることができます。また、曲げて使える材料とは違い目地のようなものが出ることもありません。
その独特な質感は空間の印象も左右することができます。

セルロースファイバーの効能

セルロースファイバーとは・・・
セルロースファイバーは植物、特に木材から取り出した天然の素材です。
天然の木質繊維の断熱材ですので、木造の構造躯体に最もなじみやすい断熱材です。セルロースファイバーは呼吸(空気、湿気の出し入れ)し、かつ調湿できる稀有な断熱材です。
ビニールハウス(グラスウールのように防湿層を作って、空気も湿気も通さない石油系の断熱材)にせず、かつ、断熱性能を発揮できる数少ない断熱材です。
原料は新聞紙を再利用するものであり石油で作り出すより遥かにエコロジーな素材であるとも言えます。
生産エネルギーもほとんどかからない自然素材(新聞紙=木材)です。

①断熱性能について
熱伝導率0.040kcal/m・h・℃で、グラスウール(16K)やロックウール(40K)とほぼ同等です。
イメージをつきやすくする為に各素材の数値を見てみましょう。
熱伝導率(伝わる熱の量)が0.06kcal/m・h・℃以下を断熱材と呼びます。
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鉄      : 52.00
コンクリート : 2.40
ALCパネル   : 0.17
杉、桧、松  : 0.12
藁畳     : 0.11
硬質ウレタン : 0.024
フェノール  : 0.020
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セルロースより断熱性能が勝る、硬質ウレタン等の場合は熱伝導率から考慮すると、セルロースの充填断熱の約半分の厚さがあってはじめて同等の断熱性能というになります。

②調湿性能とその仕組み
一般的に繊維系断熱材は空気層を確保することで断熱性能を確保しています。しかし空気層の湿度が高まるにつれて断熱性は下がっていきます
その理由は水と空気の断熱性能が大きく異なるからです。水は空気の25倍も熱を伝えやすい物質です。
これに対してセルロースファイバーは木材と同様にセルロースの細胞膜に気体状の水分子としてセルロース分子と結合(結合水)して存在し、飽和点に達しない限り細胞の外に出ることはありません
実際にどのくらい調湿が可能かというと、セルロースファイバー(木材)の繊維飽和点が30%程度です。さらに40坪の住まいで1トン程度のセルロースファイバーが使用されるので、理論上は1000kg×0.3=300kgの水を出し入れができることになります。ただし、セルロースが常に乾いているというわけではないので、気乾状態(空気中に放置した時の状態)では15%程度は元々水を含んでいると考えると、数値上は150kg/棟となります。
ちなみに実験地はその半分以下の1kgで66gなので1000kgで66kgです。

③セルロースファイバーの特徴
・材料の詳細
原料は新聞紙を再利用している分が85%を占めています。
そのほかはホウ酸天然パラフィン(ベビーオイル)です。
・燃えないか
ホウ酸が添加されており火にも強いです。
バーナーで加熱しても表面が炭化するのみで燃えません。
黒煙や悪臭、有害物質などの放出も有りません。
・カビは生えないか
ホウ酸の効能のおかげでカビや害虫(ゴキブリなど)の発生も抑制します。
・防音性能
発泡ウレタンなどの硬い断熱材では室内の反響音も大きく聞こえます。
石油繊維系の断熱材は柔らかい分硬い素材よりも防音性が高いです。
セルロースファイバーは柔らかいことに加え、繊維の中にも細胞がある分、石油系の材料よりも更に防音性を持ちます。音の透過損失は40db程です。
・施工方法
断熱材は施工が一番のポイントとなります。石油系の断熱材は施工性が良
く、大工が施工することが多い材料です(大工の技量により断熱性能も上下します)。発泡系の断熱は専門者によって断熱工事が行われる分、断熱のプロの手によって品質の確保が行われます。セルロースファイバーも材料を熟知した専門者によって工事が行われます。更に使用料のチェックや画像による検査も行われます。断熱材の中でも施工が難しい材料の分、丁寧に扱わなければならない材料であると言えます。
・環境への配慮
各断熱材の製造エネルギーを比較すると、プラスチック系が900~1400kWh/㎥に対しグラスウールが500kWh/㎥程度、セルロースファイバーは14kWh/㎥と極端に少ないのが特徴です。
断熱材を作るのにもこれほどのエネルギー使用量の違いがあります。
・実績について
欧米諸国では断熱材のシェアはセルロースファイバーが35%にも達しております。日本では1978年から国産化が始まり、1982年からは結露を防止する断熱材として重点的に施工され始めておりますが、その施工の難しさからまだまだメジャーな断熱材とはなっておりません。

無垢木材の効能

①調湿作用
無垢の木には、ある程度まで乾燥すると、周囲の水分を吸放出して自らの水分を保とうとする性質が有ります。例えば周囲の湿度が高い時には空気中の水分を吸収し、空気が乾燥して湿度が低い時には自らの水分を放出することで、常に50%前後の湿度に調節してくれます。これを調湿作用と呼び、木が建材として加工されたのちもしっかりと生きている証拠でもあります。
②リフレッシュ効果
木の家の玄関に、一歩足を踏み入れると、爽やかな木の香が迎えてくれます。この香りの正体はフィトンチッド。その香りはには、人の自律神経を安定させる効果があります。
スギの香りには脳血流や血圧を下げるリラックス効果が見られ、ヒノキの香りには脳の働きを活発にし認知力や判断力を高める効果が有ります。
③殺菌、消臭効果
フィトンチッドには、殺菌・消臭効果が有り、喘息やアレルギーの原因となるダニの繁殖を抑制する働きがあります。
また、木の持つ調湿作用は湿気を好むカビが発生しにくい環境を作ります。
④断熱性、弾性、吸湿性
人が木肌に触れた時、特にストレスは感じません。これは長時間木に触れていても体温が奪われず、冷たさを感じない為で、無垢の木材の持つ断熱材のお陰です。また歩くための適度な弾性は歩行による衝撃を吸収し疲れにくくしてくれます。夏、汗をかいた足裏の汗の吸収も心地よく、調湿効果があります。無垢の木材は最適な床材だといえるでしょう。
⑤紫外線吸収、音響効果
木を内装材に使った空間は、窓から入り込む有害な紫外線を吸収し、目や肌を保護する効果があります。逆に赤外線はよく反射させるため、人には暖かな色合いとして映ります。
また木材は音を響かせる特性があり、リスニングルームにも適しています。人の視聴覚的にも良好な効果をもたらします。

自然素材の恵み

住まいは、古より身近にある建築資材で作ってきました。日本は森林国でしたので、木材を切り出して架構を、土をこねて壁を、土を焼いて瓦を、茅を刈ってきては屋根を、そして木を加工して床を作ってまいりました。
それはまさに、全て自然素材で作られておりました。しかし人口が増え、建築戸数が増え、手間のかかる自然素材だけではまかないきれなくなり、加工技術の進歩とあいまって、人口で資材を創り出すようになり、さらにバブル期を経て、早くて、安くて、均一で、見た目がきれいで、手間がかからず、メンテナンスの楽な資材が重宝され、さまざまな化学物質が開発され、多くの種類の化学物質が大量に住まいの内部にも発生するようになり、住まいの中でシックハウスをはじめ様々な脅威にさらされるようになりました。
この経緯があり、自然素材での住まいが見直されるようになりました。

ホウ酸が住まいを守る

ホウ酸とは・・・
天然に産出する鉱物で、酸素とホウ素が結合したもので、地球上の土中、海中のいたるところに存在する天然素材です。ホウ素は私たちの体の代謝や骨の健康脳の機能向上にとっても、植物にとっても大切な必須元素です。
特に野菜や果実の育成には欠かせず、世界中で肥料として使用されおり、その使用料は年間6トンにも及びます。

①安全性について
人体や哺乳類のように、腎機能のある動物への毒性は、大量摂取しない限り認められておりません。毒性は塩と同じと考えられる程度です。
ホウ酸は、生物の代謝経路を遮断しようとするため、腎機能のない生物には毒性を発揮します。このことを「選択毒性」といいます。
人、犬、猫などの哺乳類には安全ですが、シロアリ、キクイムシ、ゴキブリ、腐朽菌、カビ等の生物に強い毒性を発揮します。
しかも、腎機能の高い陸上動物や植物にはむしろ必須元素とされるので、木材保存剤としては理想的と言えるでしょう。

②日常で使われるホウ酸は?
私たちは、水や、食事から、一日に1~3mgホウ酸を摂取しています。
ホウ酸の含まれる商品としては、洗眼液(目薬)、化粧品、ハンドソープ等でその利用目的は殺菌効果と保水効果です。
その他にも、セラミックス、医薬、肥料にも使われています。

③ホウ酸の特徴
ホウ酸には、防腐、防蟻、防虫効果があります。しかもその効果は永続しますし、ホウ酸自体が無機物であり、従来の薬剤のように発揮したり分解したりという事がありません
更に水溶性の為、腐朽菌やシロアリが繁殖しやすい湿ったところに向かって移動するという特性も持っています。この特性により、水分を含む木材の中を拡散し木材全体に含侵します。

④従来の薬剤とどう違うのか
ホウ酸は従来の防蟻剤と異なり、忌避性がないのが特徴のひとつです。忌避性のある防蟻剤はシロアリが薬剤の部分を嫌って、むしろシロアリが家全体に拡散してしまう可能性もあります。忌避性がないという事はシロアリが気付かぬ間に駆除されているという事です。
また、ホウ酸は構造金物や釘。木ネジ等の鉄製の金属との反応による腐食の心配もありません。それにホウ酸は非揮発性ですので、空気中に溶け出し室内の空気を汚す心配もありません

以上のように、ホウ酸は人体や犬、猫などのペットに安全で、空気も汚さず効果は永続し、しかも木材内部まで含侵し、構造金物や釘と反応をすることもない理想的な防腐、防虫、防蟻剤と言えます。

風の恵みが住まいにもたらすこと

風通しの良い住まいは何故気持ちが良いと感じるのでしょうか。

人が感じる体感温度は、気温だけではなく、風速や湿度によって変化してしまう極めて曖昧なものです。ちなみに風速が1m/s増すごとに体感温度は1℃下がります。風によって汗が蒸発することによって気化熱を体表から奪うからです。
さらには、人が快適だと感じる空間の環境には湿度が大きく影響しているという事実も有ります。例えば30℃でも木陰で風さえあれば体から出る汗が蒸発してくれることによって涼しく感じます。反対に25℃であっても湿度が90%にもなれば汗が蒸発することはなくなり、体表がべたつき体温も上昇するため不快に感じます。
人は汗をかくことで体温を調節しています。一般的に、湿度が10%上下すると、体感温度が1℃上下すると言われております。
気温が高くとも、湿度が程よく、しかも風が有れば人は快適に感じます。

風の道を大切に

特に高温多湿となる日本の夏は風の道を大切にしたいものです。
風の入り口→風の通り道→風の出口

を設計することが、自然通風の基本です。
・ここでは東京を例にしますが、日本には季節風と呼ばれる季節によって変わる風の大きな流れが有ります。東京の場合ですと、夏は南東からの風です。反対に冬の風は北西からの風で、乾燥した冷たい風から住まいを守らなければなりません。
・次に考える風の道は温度差による上昇気流の発生です。一階から最上階のハイサイドライトや開閉式のトップライトに向かって流れる風です。特に住宅が密集している地域では、効果的な風の通り道になります。